駅前通りに出たのだ。


さっきまで少なかった人通りも、さすが駅前だけあって急に増えている。

歩く人は皆、駅を目指しているようだった。

夕暮れに染まる町は、オレンジ色の川のようで歩く人はそれに流されてゆくみたい。


「家の方角じゃねぇのに、あいつどこ行くんだろ」

首をかしげながら涼がつぶやいた。

「ほんとだね。まさか、誰かと待ち合わせとか?」

「今、浮気相手でも出てくれば、ラクな調査なんだけどな。太一は証拠がほしいみたいだし」

「それはそうだけど……。でも、佐藤太一くんがかわいそうじゃない?」


あの純粋そうな色黒の顔が浮かんだ。