それは、自分ひとりが勝手に盛りあがっているからなの?

これが、単に人助けのためだからなの?


知らずにため息。


もやもやしたこの感情が、ほんと、自分でコントロールできたらいいのに。


「おい」

そう言う涼の視線の先を見ると、曲がり角で紗江が立ち止まって手を振っていた。

左を歩いていた子と、ここで別方向に別れるらしい。

紗江はその子が背を向けてしばらくしてから、ようやく手をおろしてまた歩き出す。


「駅の方向だな」

「うん」


紗江はこの町の最寄りの駅の方角へ足を進ませている。