ようやく動けたのは、

「ちょっと、未希聞いてる?」

と、耳元で言う萌絵の声に驚いたから。


「あ……」

ようやく呪縛がとけたように、萌絵の顔を見た。


「どうしちゃったのさ? ぼんやりして」

その声を聞かないうちに私はなぜか立ちあがっていた。

「もう戻ろ!」

「未希?」

「ほら、早く」

そう言うと、萌絵が立つのを待たずに早足で歩き出していた。