なんでこんなに揺さぶられるのか。

感情のコントロールもできなくって、なんだか泣きそうな気分。

「もしさ」

「ふぁい」

急に言われて、ヘンな返しをしてしまう私。

しっかり!

「もし、紗江が立ちどまったりふりかえっても普通にしてろよ。あくまで通行人に徹すること。驚いた顔をしたり、視線をあわせたりすんなよ」

「う、うん。わかった……」

「よし。じゃ、もっと近づいて」

「え?」

驚いて涼を見ると、あきれたような顔をして、

「だから、俺たちは設定上は恋人なんだって。そんな離れてたらおかしいだろ」

と、人差し指を動かして『こっちに来い』と示している。