思いっきりかみついてやろうと口を開けた私に、

「バカ、俺だよ」

ヒソヒソ声が言った。


そこでようやく手が離される。


「りょ、涼!」

「バカ、静かにしろ」

「何度もバカって……」

そこまで言いかけて気づく。

涼の隣ではヒカリも正座をしていた。

「どういうこと?」

「いいからいいから」

鼻歌でも歌いそうに涼は言うと、ポケットからなにかを取り出した。