夜のグラウンドは、校舎からの明かりだけでは不十分なほど暗闇が覆っている。


それはまるで黒い海。


いつものベンチに腰かける私と涼とヒカリ。

でも、昼と夜ではまったく違う。

グラウンドが黒い海なら、このベンチは小舟だ。

それに乗ってさまよう船旅をしているよう。

まだ鼻をすすっているヒカリを真ん中の席にして守るような形。

「帰っちゃったね」

ヒカリを見ると、こくんとうなずいている。


『残る』と言い張る元弥と博美にはひとあし早く帰ってもらっていた。


ヒカリのまわりに幸せオーラが見えるようでうらやましい。


誰もが呪縛から解放されて、明日からはもっと幸せになるんだろうな。