そして、私は気づいた。

前の席に座る博美の目が涙でうるむのを。

「……博美さんは気づいていたんですよね?」

声をかけると、一瞬ビクッと体をふるわせてそして力なくうなだれる。

「……どうして? なんでわかるの?」

自分の組んだ両手を見つめながらも、博美は静かに尋ねた。

「同じなんです」

「同じ?」

「博美さんの“現状”は『囚人』、ヒントは『勇気』だった」

その言葉に博美は「そうなんだ」と、泣き笑いの顔になる。

「でも、“未来”は違っていました。博美さんの“未来”は『夜明け』です。これは、博美さんを【捕えていたものからの解放】を意味すると思います」

うんうん、とうなずきながらもう博美は泣いていた。