「もう長谷川しかいなかった。『とっくに帰った』なんて言いやがって」

クソッと言う涼をなぐさめてあげたい。

だって、長谷川先生はなにも知らないんだし……。


なにも?


さっきの占いがよみがえる。

言おうか迷っていると、突然涼が足を止めた。


ムギュ


背中に鼻を思いっきりぶつけた私は、ヘンな声を出した。

「いったいなぁ、もう……」

文句を言おうとした私の視界に、なにか見えた。


涼の背中越し、向こうから歩いて来るのは……。