私が彼の元へ向かっていることに気づいたのか、教室から波が引くように音が消えてゆく。

残るのはヒソヒソ話をする小声。

なごやかな空気が一変するのを感じる。

私が近づいて行っても、微動だにしない彼に話しかけるのをためらっていると、

ドン

また背中を押された。

振り向くと、仮面のように満面の笑みを浮かべた涼の顔が。


わかってるって!


「あの……お話を聞かせてもらってもいいですか?」

「……」

無言で私を見る顔。