「……わかった」

涙をこらえながら小さな声でヒカリはうなずいた。

「萌絵はヒカリにこれからしばらく、護身術を教えといてくれ」

突然名前を呼ばれた萌絵が、

「え!?」

と、驚くが、それには構わずに涼は自分で納得してうなずいている。

「殺されるのがいつなのかわからない以上、身を守る方法を知っておいたほうがいい」

戸惑いを顔に思いっきり浮かべて、おずおずと萌絵は質問をするみたいに右手を上に伸ばした。

「涼先輩、でもあたしのやってるのは柔道であって、護身術とはちょっと違うくて……」

「似たようなもんだ。たのんだぞ」

有無を言わさない口調に、萌絵は「ふぁい」と答えた。