「楓さんは」

私が口にすると、校長先生の視線が私に向いた。

「この木のことをよく知っていました。まだ、学校が建つ前にはたくさんの人が集ってくるシンボルみたいなものだった、って。そういう人たちを見てるのが好きだった、って」

「おい、マジかよ」

涼がびっくりした顔をして私を見た。

「この学校って、築30年だぜ」

「そうなんだ」

「そうなんだ、じゃねぇよ。学校建設の前のことを知ってるなら、楓はいくつなんだよ」

「あ、ほんとだ」

これには私が驚く番だった。