「ああ」

雅紀が亜実を見た。

亜実が1歩前に進む。

「この家は、私の父親が経営する河原崎不動産が買い取らせていただきます。もちろん、相場の倍以上はお出しいたします」

「はぁ……」

河合があっけにとられている。

「その上で、この土地は区画整理に提供いたします」

「なぜ、そんなこと……を?」

「あの木を救うためです」

亜実の指さした方には、紅葉が見えた。


風に揺れて、ほんとうに真っ赤に燃えているみたい。