「え?」

「もう10年前の話。事故であっけなく逝ってしまった。僕はそれからひとりだった。遠い町で暮らしててさ」

「雅紀……」

あごがふるえている。

「この町にも戻ってきたかった。だけどさ、心のどこかで『捨てられた』って気持ちがあってさ……。だから、僕はこうしてまた会えたことを感謝してるんだよ」

その言葉に河合の目から大粒の涙があふれた。


ボタボタと地面に落ちる涙もかまわずに、河合は顔をゆがめながらも雅紀を見ている。