「そんな時、彼が通りかかったの。それで、その女の子に自分のカサを貸してあげたの。自分のカサはなくなるのに、ためらいもなく渡してた」

その光景を思い浮かべると、まるで映画のシーンのよう。

「結局、長い間雨は降り続いて、その間彼はずっとここで穏やかな顔をして空を見ていた。……そういうところが好きだった」

「その女の子が、楓さん?」

「え?」

ぱちくりと目を開いた楓が、あわてて手を横に振って否定した。

「私なわけないってば。それをただ見てただけ」

「そうなんだ……」

楓はまた遠くをみるような目をする。



その横顔は強くて、そして……悲しい。