楓が木にもたれるようにして座ったので、私も同じように腰かけた。

葉が揺れて重なる音が聞こえる。

「あのさ」

私の声に、楓がこっちを見た。

「ん?」

「彼のどういうところが好きだったの?」

楓は両膝をぐっと体に近づけて、

「えっとね……」

と、考えてからこう答えた。

「ある雨の日にね……」

「うん」

「この木の下で女の子が雨宿りをしてたの。すごい雨でね、雷もすごかった」

楓は思い出しているのか楽しそうに目を閉じる。