「きれいね……」

赤の向こうに見える青空とのコントラストに思わず目を細める。

「秋だけじゃないんだよ」

楓が視線はそのままにやさしく言う。

「冬はこの枝に雪が積もって、真っ白な木になるの。春は芽吹く葉に命を感じるし、夏は青々した葉が風に揺れて大きな日蔭を作ってくれる」

「1年中、いつ見てもキレイなのね」

そう言ってみるけれど、楓は悲しい目をしたまま。

それは、この木を守りたいから?


それとも……。


「楓さん、この木がそんなに好きなの? なにか思い出があるの?」

その声に、ゆっくりと顔をおろすと楓は私を見た。