「そうなのですけど……」

亜実が言葉をにごした。

「どうかしたんですか?」

「結局、工事までに移植を終わらせるとなると、夜の間も作業をやらなくては間に合わないんです。そうなると、ご近所のみなさんに同意書を書いていただかなくてはなりません」

「同意書……」

「夜間の移植では、どうしても音がしてしまいますから。父の知り合いの業者に頼んで、だいたいのお家からはすでに同意書をもらったそうなんです。だけど……」

亜実が視線を向けたのは、すぐ横にあるとても大きな家。

「この家?」