「はい。お電話いただきました。夜の間に移植するんですよね?」

「移植ってなに? なにを移動するの?」

話についていけない萌絵が尋ねる。

「だから萌絵、依頼の内容は話せないんだって」

「この木ですわ、萌絵さん」

亜実が指で真上を指さす。

「区画整理から逃れるために、この紅葉を校内に移動するんです」


言ってるし……。


「やっぱりあの依頼なんだね。で、今からやるの?」

すっかり話に加わっている萌絵。

涼はあさっての方向を見ている。