「えーケチんぼ。この間依頼に来た恩田楓って子のじゃないの?」


……やっぱ聞いてたんだ。


さすが、というか抜け目ない、というか。


「ノーコメント」

ぶうっとほほをふくらませた萌絵が、柔道で段を持っているなんて誰も信じないだろうな。

「でも、学校行くんでしょ?」

「うん。校門の近くに大きな木があるでしょう?」


萌絵はあれが桜の木じゃないことを知っているのかな?


そう思って聞いてみると、ふんふんとうなずいて、

「あの紅葉の木でしょ」

と、あっさりと答えた。