「はい、柴田です」

「おはようございます。校長の兼子です。すみません、ご自宅にお電話してしまって」

「いえ」チラッと背後を見やる。

真っ青な顔でお母さんがふるえている。

「大丈夫です」


そう言うしかない。


「この間の話なんだけどね、金曜日に市役所の人に交渉してみたんだよ」

「どうなりましたか?」

「……すまない。区画整理自体はやはり止めることはできなかった」

「ええー。そんなぁ」

脱力した声をあげた私の声に、お母さんは『退学になった』とでも思ったのか、

「お、お、お父さん、お父さんっ!」

と、大慌てで走って行ってしまった。