「え?」

言われた意味がわからないのか校長先生が楓を見た。

「あの木の思い出、あるんですか?」

「あ、ああ」

校長先生の目線がやさしく思い出をたどるように宙を見た。

「小さいころはよく遊んだもんだよ。この時期になると真っ赤になるあの大木は、僕たち子供にとっては秘密基地だった」

「そうなのですね」

楓もうれしそうにほほえんだ。

「子供にとってあこがれだったんだろうなぁ。もちろん、大きくなっても待ち合わせなどで、ことあるごとにあの木を使っていたもんだよ」