「その気持ちはうれしいが、来週には工事がはじまる。その工事が遅れることは許されないんだよ。移植には相当の時間がかかるからね……」

「遅れるとマズいんすか?」

涼の質問に校長先生は椅子に力なく座った。

「区画整理は計画に基づいておこなわれるんだ。うちが遅れることで市全体の工事が遅れるだろう。移植の承認は絶対におりないだろう」

「そうですか。わかりました、お時間ありがとうございました」

あきらめが早いのか、一礼すると亜実は校長室から出て行った。

涼も出て行きかけて私たちをふりかえる。

その時、楓がうなだれている校長先生に近づいた。

「校長先生。先生も、昔あの木で遊んだんですか?」