涼と亜実の足は速く、ようやく校長室についた頃には、もうその姿は重厚な扉の向こう側にあった。

「失礼します」

そう言って中に入ると、校長先生との話ははじまっていた。

もう50歳を超えているだろう校長先生は、ダンディと呼ぶにふさわしいなかなかのイケメンだと生徒の間でも評判。

だけど今、校長先生は汗をハンカチでぬぐいながら背筋をビシッと伸ばして亜実の話を聞いている。

まるで先生に怒られている生徒のように見えた。

「ですから、区画整理をどうにかしろと言っているわけではありません。あの紅葉の木を助けてほしいとお願いしているんです」