そうして、楓は涼と亜実の方を向く。

「私にとってこの木は、小さいころからの思い出の場所なんです。たくさんの人がここで待ち合わせをしたり、子供たちが走り回ったり……」

遠くを見るような目で話す楓の横顔は、なんだかキレイだった。

「この町もどんどん変わってきました。さっき掲示板でこの木が倒されるのが、区画整理のためだと知りました」

「ああ、そうらしいな」

「町を発展させるために区画整理も必要かもしれません。だけど、この町の歴史とともに生きてきたこの木を、切らずにすむなら……。そう思っているのは私だけなのでしょうか?」