秋の夕暮れの校庭。


校門の手前から右へ歩いてゆくと、グラウンドの手前に目的の木はあった。

しっかり見たことがなかったけれど、こうして近くで見るとものすごく大きい。

その木の下に楓は立っていた。

額を木の幹にくっつけて目を閉じている。

その姿が、なんだか木と話をしているようで、一瞬声をかけるのをためらうほど。

まるで1枚の風景画がそこにあるみたい。


「君が楓か?」


ぶ。


空気を読まない涼が遠慮なしに声をかけると、楓はゆっくりと目を開けてこっちを向いた。