「ああ。あの木?」

学校の壁面のギリギリに、ものすごく大きな木があることは知っていた。

まだ近くで見たことはないけれど、けっこうこの学校のシンボルっぽいなぁ、って思ってたから。


「あの木を守ってほしいの」

「守る……? どういう意味?」

「私ね、昔からこの近所に住んでいたの」

そう言うと、楓はなつかしむような顔をした。

「まだこの学校もできてなかったころの話だよ。空き地にあったあの木は、遠くからでもすごく目立ってね」

「へぇ」