「ウソ……。ウソでしょう? ね、太一、ウソだよね? 千佳、千佳ぁ」

おさえていた涙があふれた紗江がふたりの顔を交互に見るが、どちらも黙ったまま。

「なんで? なんでこんな……ひどいことするの。するのよぉ」

紗江の泣く声が部室に響く。

ダムが決壊したかのように止まらない感情が、次々に涙になってこぼれ落ちている。


ゆらりと太一が一歩前に進んだ。


「……うるさい」

その声が一瞬聞こえなくて私は太一を見た。

「うるさい、うるさいうるさい!」


真っ赤な顔をして太一が叫んだ。