悲しみ笑いをして、亜実は千佳を見た。

「でも、はじめから疑ってた依頼ですから。千佳さんに『紗江さんの恋人は佐藤太一さん?』とうかがった時のことです。『はい』と答える千佳さんの表情には“嫉妬”が浮かんでいました」

「……っ」

顔をそむけた千佳。

その目には涙が浮かんでいた。

「太一、残念だったな」

涼がまっすぐに太一を見た。


その目には怒りやあわれみは浮かんではいない。


「君は浮気の証拠をつかんで、紗江が悪いことにして別れたかった。『千佳の兄』とかそういうのも、別れてしまえばどうでもよくなる。そうすれば堂々と千佳とつきあえたはず。だけど、甘い。計画があまりにも甘かったよ」

そう言うと、涼はまた椅子に腰かけた。

ほんと、名探偵みたいに見える。