千佳は顔を伏せながら、両手でスカートをギュッと握っている。

太一も、唖然とした表情のまま固まっている。

「紗江」

涼が戸惑う背中に声をかける。

「君の彼氏である太一は、君の親友の千佳と浮気をしていたんだ」

「え……?」

なにかの冗談だと思ったのか、一瞬口元を緩ませた紗江だったがすぐに口を閉じた。


そう、これは冗談なんかじゃないから。


「太一は千佳に本気になった。だから、君と別れようと思った。そこで、千佳を使ったんだ。千佳はこう言ったんだろう。『駅前に兄が来るから、ちょっと渡してほしいものがある』とかなんとか」