「今回の依頼、はじめからヘンだったんだよ。君はいやに証拠にこだわっていたね。それは離婚を決めた人が、相手としっかりと別れるためにすることだろ。証拠を握って優位に立つための手段だからね」

「知るかよ」

「つまり、はじめから俺たちは疑ってたんだよ」

涼が、目だけをチラッと私に向ける。


はいはい。


私はちっとも疑ってませんでしたよ。


「バカじゃねぇの。そんなの、おたくらの思い込みだ」

「そうかな? 紗江、ここから先は聞かないほうがいい。どうする? 帰ってもいいんだぞ」

急にやさしい口調で言う涼を、紗江がおずおずと見た。