『美術部』の部室は、当然のように美術室だった。


部員は思ったよりも多く、15名程度いるらしい。

今日はそのうちの6名が参加している。

みんな無言のまま、キャンバスに向かっている。

美術室のはしっこに立っている私に、紗江が近づいてきた。

「どうですか? なんとなく雰囲気、伝わりましたか?」

メガネ越しの瞳がやさしく線を描く。

すごくやさしそうなのに、昨日の光景を思い出してつい目をそらしてしまう。


いけない。


潜入捜査なんだから。

美術に興味のある1年生を演じなくちゃ。