「今日は一段と賑やかだなー」


紫苑先輩笑いすぎじゃないすか、と呆れる日向先輩の声を聞きながら洗濯かごを抱え直していたところへ飛んできたのは、爽やかに笑う陸上部員の声。


「む、村瀬さん」


こんにちは、と真央くんに鼻をつままれたまま挨拶をすると、村瀬さんは軽く手を挙げて応えた。

半袖のTシャツと半ズボン、こんがりと焼けた肌はこの前会ったときよりもさらに茶色いような気がする。

颯爽と私たちの前まで走ってきた村瀬さんは、どうやらアップの途中らしい。


「葵ちゃん真央くん、なんか会うの久しぶりな気がすんな。元気?」

「あ、えっと、はい、元気です……」


相変わらずの爽やかさに目を細めながら返事をすれば、ところでそれしゃべりにくくねーの、と疑問符が投げかけられた。何のことかと思えば、指差されたのはつままれたままの鼻。


「……」

「……真央くん」


確かにちょっと話しにくい、と真央くんを見上げると、そっと指は離れていく。

解放された鼻から、すん、と息を吸うとさっき回収したラグビー部の洗濯物から汗と土の匂いがして、息をしたことを後悔した。