「いきます……あっ! わわわ、ご、ごめん」
「いーよ」
くわ、と欠伸をしながら、またボールを拾いに行く米川さん。その足取りは重く、気怠そうだった。
私とペアじゃなかったら、きっと米川さんも退屈しないでパスの練習ができただろうに。そう思うとさらに申し訳なさが募って、消えてしまいたくなった。
そういえば、あの日も。
私は自分という存在に価値を見出せなかった。ずっと降り積もっていた消えてしまいたいという気持ちが、私を屋上へと向かわせた。
決して多いわけではなかったけれど、顧問の先生がうざいとか先輩に怒られたとか、一緒に愚痴る友だちがいたことはある。でも、あの頃みたいに話せない、笑えない自分に嫌気が差していた。
だから余計に壁を作った。そうすることでどんどん距離が出来た。弱っちい自分を守るために、みんなから一歩下がった。
銀色のトランペットに映る自分の顔は、いつだって無気力で泣きそうで腑抜けていた。
「あ、ちょ」
不甲斐ない自分に溜め息を吐いていると、突如耳に入ってきた短い音。
え、と顔を上げればドゴッと派手な音がした。それと同時に、鼻に激痛が走った。