「ご、ごめん」
「いーよ、気にしなくて」
今度は米川さんから私へとボールが来る。真っ直ぐ、ワンバウンド。私が構えていた手のところにやってきたボールを、あたふたしながらキャッチした。
下手なのが少し恥ずかしくて笑ってごまかしてみるけれど、当の米川さんは全く気にした様子もなく突っ立っている。
「い、いきまーす」
「うん」
今度こそ、と思いながらボールを押し出す。しかし今度は力み過ぎたのか、ボールは大きく跳ねて米川さんの頭上を越えていった。
「ごご、ごめん!」
「いーって」
ボールを拾いに行く米川さんの後ろ姿に声をかける。申し訳なさで沈みそうだ。
米川さん、面倒くさいやつとペアになってしまったって思ってないかな。私が米川さんの立場だったら確実に思ってるわ。
周りの子たちがきゃっきゃと笑いながらパスの練習をする中、私と米川さんはただただ無表情でボールを渡し合う。