私がそれを知らなかったのは、単に噂話をする相手がいなかったから、である。




「じゃあ適当に二人組作って」


今朝の古賀先生の話を思い返しながら、ぼんやりと受けていた体育の授業。そこで飛び出した魔の言葉に、私は頭が痛くなった。

サッとみんなの探るような視線が飛び交う。すでにクラスの中にはいくつかのグループが確立されているけれど、人数が奇数のグループは誰か一人が他のグループの子と組まざるを得ない。どことどこが引っ付いて、誰がその犠牲になるのか。水面下で繰り広げられる抗争を眺めていたら、私は案の定二人組を作れず残ってしまった。


「あれ、このクラスって奇数だった? 余ってる人いない?」


一人ぽつんと佇む私に気づいた先生がそう声をかける。お手数おかけしてどうもすみません、と心の中で頭を下げながら私は肩をすくめた。

どこかで三人組にするか、とまた頭が痛くなるようなことを先生が呟く。ちら、とすでに二人組を作っているクラスメイトたちを見れば、先生と目が合わないようにしていた。そりゃそうだ、誰だって体育は仲の良い子たちとわいわいやりたいだろう。

二クラス合同でやっている体育だけれど、隣のクラスの子たちは我関せずといった感じで口々に話していた。