「それで? 今日はどうしたんですか」
マグカップを手渡しながら紫苑先輩が促す。コーヒーの匂いがふわりと漂った。
「あ、そうそう。まあ大体予想はついてるかもしれないけど、今井くんのこと」
「へ」
古賀先生の口から出てきたその名前。顔を上げれば、紫苑先輩が頷いた。
「来ましたよ、一昨日くらいに。随分思い詰めてたみたいだったけど、二度と来ないって言って笑ってました」
「あら、早期解決だったのね」
「ここに来る前のこと覚えていたみたいだったので」
覚えてる人って大体早いよな、と日向先輩も相槌を打つ。
「来る前のこと、って」
思わず口を挟むと、先輩たちの視線が私へと向いた。そしてそれは、ゆっくりと古賀先生に移る。
古賀先生はぱちりと瞬きをして、まだ話してなかったの、と不思議そうに呟いた。
「タイミングがつかめなくて。あと真央くんストップが入ってて」