「葵、そこにあるやつも全部まとめて洗うぞー」
「は、はい」
朝七時半。五号館二階奥の空き教室。
どっさりと置いてあった洗濯物を何回かに分けながらベランダに設置されている洗濯機に入れる。洗剤を入れてスイッチを押す日向先輩の隣で、私は空を見上げた。
「今日はいい天気ですね」
まだ朝だから空気は涼しいけれど、きっとそのうち暖かくなるんだろう。白い絵の具を水で薄く溶いたような雲が、綺麗に晴れた空にかかっていた。
「洗濯日和だな」
隣で日向先輩も空を見上げて頷く。確かに今日は洗濯物もよく乾きそうだ。
「こんな天気いい日はどっか行きたくなるなー!」
「ど、どっか」
「ピクニックとか行きたくね? あ、バーベキューもありだな! つーか肉食いてーな!」
「いやそれお肉食べたいだけじゃないですか」
ばれたか、と日向先輩は歯を見せて笑いながら私が持っていた洗濯かごをひょいと奪って、開けっ放しだった窓から部室の中へと入っていく。私も慌ててその背中を追った。