さっきは気づかなかったけれど、美青年は床に何かを並べていた。

ひとつひとつ丁寧に、一定の間隔を開けて並べられていくそれ。


……一体、何をそんなに丁寧に並べているんだろう。


不思議に思った私は、ぎゅっと鞄の持ち手を握りながらゆっくりと廊下の突き当りを目指して足を踏み出す。

この静かな空間に極力音が響かないように、忍者になった気持ちで歩いた。


空き教室に近付くにつれ、だんだんと見えてきたそれ。


「……え」


あと数メートル、というところで私はぴたりと足を止めた。


「い、石?」


私のその問いにしゃがみ込んだままの美青年はぴくりと肩を揺らす。しかし私の問いに答えることなく、またすぐに手を動かし始める。

五号館二階奥の空き教室。

そのドアの前にしゃがみ込んでいた美青年は、どういうわけだか、石を等間隔に並べていた。


えーっと、これはどうすべきなんだろう。

私はとりあえずこの先の空き教室に用があって、ここを通りたいんだけれども。


「……あ、あのーう」


とにかく、話してみなければどうにもならない。にじみ出ている美青年のオーラには気圧されてはならないのだ。

うむ、と自分に頷いてもう一度声をかける。


「あ、あの、すみません」


その私の声に、美青年はまたぴくりと肩を揺らす。しかし顔を上げるわけでもなく、またすぐに石を並べる手を動かし始めた。