部活動なんてまともにしたことがない。仲間なんていたこともない。そんな自分が、必要とされている。
勉強以外で必要とされることが久しぶりで、緊張しているのだろうか。ドクンドクンと自分の耳元で心臓が動いているみたいだった。
しとしと、霧のような雨があたりを濡らす。
いまだ迷っていた女子生徒は、ね、と再度木村に促されて、ようやく彼のほうへと体を向けた。
「じゃあ、あの、今井さんこれ」
お願いします、と言いながら差し出された洗濯かご。その中には色とりどりのビブスが入っていた。
彼はごくりと唾を飲み込んだ。いつの間にか掻いていた手汗を制服のズボンで拭いた。
どんな顔をすればいいのだろう、と顔をしかめながら思う。
胸にじんわりと込み上げてきた温かさを表情に出してしまえば、意地悪く笑う木村が安易に想像できて。
「……うん」
結局彼はしかめっ面のまま、洗濯かごを受け取った。持ってみると、思っていたよりも重たくなくて少し拍子抜けする。
木村はというと、そんな彼の様子を意地悪く笑いながら見ていた。
結局どんな顔をしてもそういう反応をするんだな、と彼は大きく息を吐く。そしてまだドクンドクンとうるさい心臓を落ちつけようと、大きく息を吸った。
そのときだった。