「じゃあそれ頼む」
「おっけ、任せとけ!」
「いつも悪いな。ありがとう」
部長同士のそんな会話が聞こえてくる。
不覚にもその会話をうらやましく思う自分がいた。
誰かに必要とされて、頼まれて、任されて、感謝をされて。彼がそれを経験できるのは、勉強しかなかった。
しかしこの“死にかけ”たちは、彼が慈善事業だと馬鹿にしたことを通して経験している。それがひどくうらやましく、だからといってそれをしたいかと聞かれれば、彼の答えは否だった。
「よし、じゃあ次行くかー! 紫苑先輩行きますよ!」
部長と洗濯かごを抱えた女子生徒が彼と美青年の元に戻って来る。
木村は呼ばれているにも関わらず、だらだらと歩きながら笑顔でラグビー部の部員たちに手を振っていた。
「……君はもう少し部長に協力的になってもいいんじゃないのか」
「え~?」
「部長が不憫に思えるぞ」
「あんたは真面目すぎるのよ」