「ラグビー部さんこんにちは、洗濯部です!」
部長が明るく挨拶をすれば、野太い声が返ってくる。
「あの、洗濯物ありましぇ……ありませんか……」
途中で噛んだのが恥ずかしかったのか、消え入るような声でラグビー部の部員に話しかける女子生徒。
「紫苑さん今日も美しいっす!」
「あらありがとう」
いつの間にか隣から消えていた木村は、ガタイの良いラグビー部の部員たちに囲まれて笑顔を見せていた。
となると、残っているのはまったく話す気配のない美青年だけ。ちらりと見上げてみるが、美青年は彼のことなど気にも留めずに、ただ真っ直ぐどこかを見つめていた。
何を見つめているのか、少し気になってその視線を辿る。行き着いたのはおどおどと洗濯かごを受け取っている女子生徒。
特に面白いものでもないな、と思いながらも美青年と一緒にその様子を眺めた。
「新入りちゃん、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です、先日はその、失礼しまして……」
女子生徒がそう言いながら頭を下げると、ラグビー部の部長らしき人は笑顔を浮かべながらその肩を叩く。
長い前髪が邪魔して女子生徒がどんな顔をしているのかはよく分からない。隣にいた美青年がぐっと眉を寄せていたことに彼は気づくこともなく、前髪切ればいいのに、と心の中で呟いた。