「それより、これは一体何なんだ?」
「何って? 見ての通り部活動よ」
彼はこれまで、部活動というものをしたことがなかった。
もともと小柄な彼が運動に苦手を感じるまで、そう時間はかからなかった。どれだけ頑張ってもかなわない、と悟ったのは小学生の頃の話である。
それからずっと、勉強だけに生きてきた。
中学まではずば抜けて成績が良く、周りからの期待も大きかった。期待されればされるほど、それが自信へと繋がった。
運動はできない、だからといって文化部に入る気もなかった彼は、家庭科部に身を置いた。実質活動はなく、放課後は塾で過ごした。
勉強すればするほど、顕著に成績は上がっていく。周りからも一目置かれる。クラスで目立つグループが宿題を写させてくれと頼みに来る。それが彼の自尊心を満たしていた。
勉強ができなければ、きっとスクールカーストの底辺に属していただろうが、彼は勉強ができたことで別枠扱い、孤高の存在になり得たと自負していた。
しかし、高校入試で事態は一変した。