――今井康平は戸惑っていた。
「こんにちは、洗濯部です! 汚れた物はありませんか! 真心こめて洗濯します!」
「こ、こんにちは洗濯部です」
「ほら、今井も声出して」
くいっと引っ張られた袖口。クラスメイトの木村がその端正な顔をほんの少し崩して笑う。
しかし彼にはこの状況がどうにも受け入れられなかった。
「ふざけるな、君だってまったく声を出していないだろう」
後ろにいる美青年も、と続けようかと思ったが一瞬固まった木村の表情を見て、口を噤んだ。
「私と真央くんはいいの、美しいから」
「まったく理解できない」
「あら、理解しようと思ってくれたのね」
揚げ足をとるようにそう言っていたずらに笑う木村は、一・二年生の間で絶大な人気を誇っている。
木村の本当の姿を知っている身から見ても、なるほどこれは自分で美しいと言うだけあるな、と思うほどに完璧な擬装だった。