わあ辛辣、と呟きながら日向先輩はへらりと笑う。


「まあしゃーねーな! 携帯はあとで取りに行くから、とりあえずグラウンド行くか」

「雨大丈夫かしら」

「ギリ行けるだろ。よし、そしたら……あーっと、今井さんは一応体験入部ってことで!」


日向先輩はそう言いながら、私と真央くんの背中を軽く押して部室から出るように促す。

声を掛けられた今井さんは、ここぞとばかりに口を開いた。


「体験も何も、僕は入部するつもりなんて無いし、そんなことをしている時間は無いんだが」


棘のある声が廊下を滑る。


「君だってそうだろう、木村。僕たちは受験生で、もう五月だ。一秒だって無駄にできない」

「あら、随分気が早いのね」

「……君は随分悠長なんだな」


そんな皮肉を向けられても、紫苑先輩はにこりと笑う。

完璧に計算され尽くした角度で上がっている口角と、柔らかく下がる目尻。小さく顔を傾けると艶のある黒髪が揺れた。