――屋上。
ドクン、と心臓が大きく音を立てた。
何故だろう。急にざわざわと、嫌な胸騒ぎがする。
紫苑先輩と日向先輩が同時に私を見て、困ったように二人で顔を見合わせた。
「……そっちかー」
「そっちね」
なに、何だ? そっちってどっち?
頭の上にハテナを浮かべながら、先輩二人の顔をきょろきょろと見て首を傾げるけれど、二人はただ困ったように笑うだけ。
「まあまあ今井、とりあえず座って? お茶でも淹れるわ」
「先に説明してくれないか」
「……せっかちな男はモテないわよ?」
「な……っ! よ、余計なお世話だ!」
顔を赤くした今井さんを笑いながら、紫苑先輩は立ち上がって棚のほうへと足を進める。
電気ケトルにさっき沸かしたお湯がまだ残っているのを確認して、今井さんへと視線を向けた。
「日本茶のパックは今ちょうど切らしちゃってるから、紅茶かコーヒー、どっちがいい?」
「どっちもいらない、説明を」
「分かった、じゃあオレンジジュースね」
「……人の話を聞かないか」
するりするりと話をかわしていく紫苑先輩に、いらついたように今井さんはため息を吐く。