我関せず、といった態度の真央くんは何故か私を観察するように眺めながらマグカップを口に付ける。
いやよくこの状況で飲めますな、と心の中でツッコミを入れつつも、私もまだ結構グラスに残っていたオレンジジュースを口に含んだ。
「一体これはどういうことだ?」
そんな私たちには目もくれず、今井さんは紫苑先輩を見据えて問いかける。
「日向そんな強引に連れてきたの?」
「いや掲示板でポスター見てたから“そう”だと思って声かけたんすけど」
へらりと笑いながら答えた日向先輩に、紫苑先輩は神妙な顔で頷く。
掲示板で、ポスター。
そう言われて思い出したのは、日向先輩に声をかけられたあの日のこと。
高校でもう一度やってみようと思って吹奏楽部に入ったけれど、結局トランペットを吹くことができなくてやめてしまったのが四月の終わり。
吹奏楽部の子たちとの関係を中途半端に作り上げてしまった私は、もう部活は入らないでおこうと心に決めていた。
避けていたはずの部活。なのに何故私はあの日、勧誘ポスターが貼られている掲示板の前にいたのだろう。
今でもよく覚えていないことを思い返しながら、私はもう一口オレンジジュースを飲む。
今井さんは納得がいかないのか、さらに言葉を続けた。