「え、で、だ、誰なんですか?」
「だから新入部員だって! 葵、お前に後輩ができたぞ!」
「い、いや、あの、……三年生ですよね……?」
日向先輩にしっかりと腕を掴まれている眼鏡をかけた男子生徒。その襟元についている校章は緑。三年生の色だった。
恐る恐る彼に聞けば、返ってきたのはため息がひとつ。
その反応に怯んでいると、代わりに隣で紫苑先輩が頷いた。
「今井康平(いまいこうへい)。私のクラスメイトだわ」
「そ、そうなんですか」
ね、と紫苑先輩が声をかけると眼鏡をかけた男子生徒――今井さんはようやく口を開いた。
「説明してくれないか」
むすっと紫苑先輩に視線を向けながら、落とされた言葉。
明らかに不機嫌で、しかしその中に困惑も含まれているような、そんな声。
説明? 何を?
いまいち言いたいことが分からず首を傾げると、斜め前に座っている真央くんから視線が飛んできた。