驚いて真央くんを見ると、何食わぬ顔で紫苑先輩から貰ったチョコレートを食べていて。
「ま、真央くん!」
「……」
「……あ、えっと……」
勢いのまま声をかけたけれど、顔を上げた真央くんに何を言えばいいのか分からなくて。
私コーヒーって言ったのに、どうして分かったの?
本当はコーヒーも紅茶も苦手だって、言ったことないよね?
ぐるぐる頭の中を色んな言葉が駆け巡る。そのどれを選ぶべきか自問自答している間に、だんだん真央くんの眉は寄っていく。
えーっと、えっと、こういうときは、えっと。
「あ、……ありがとう」
ただ、それだけ。
考えすぎて分からなくなった私は、結局ただそれだけを音にした。
真央くんは目を大きく見開いて、それからコクンと頷く。
隣に座っていた紫苑先輩が、トンと私の肩を叩いて笑った。