それはあまりにも突然の出来事だった。
「というわけで、新入部員の方です! 拍手!」
「いやいやちょっと待ってください!」
いつもと変わらない笑顔で高らかに言った日向先輩を思わず制する。
何か問題でもあるか、と不思議そうに日向先輩は首を傾げるけれど、問題大ありである。
「め、めちゃくちゃ嫌そうな顔してるじゃないですか!」
日向先輩の隣に立っている、否、逃げないようにしっかりと腕を掴まれている背の低い男子生徒。
眼鏡をかけた如何にも神経質そうなその人は、忌々しげに部室を見渡してため息を吐いていた。
――事の起こりは数分前。
「はい出欠とるぞー! 紫苑先輩!」
「はーい」
「真央!」
「……」
「無視はやめて! せめて挙手して! それから葵!」
「は、はい!」
「そして日向! はい! 全員出席!」
「これ毎日する必要ある?」