古賀先生と男の人によって、真央くんから引き離された女の人は、うわごとのように真央くんの名前を呼ぶ。
髪を乱しながら真央くんへと手を伸ばしている女の人を、古賀先生と男の人が引きずるように廊下へと連れて行った。
呆気にとられながら、嵐のように去って行く三人の姿を見つめる。
……え? えーっと、今のは一体何だ?
混乱する頭の中を整理しようとしてみるけれど、どうにもまとめることができない。
ただ一つ、思うのは。
「……真央くん」
隣で何事もなかったかのように絵を描き始めた真央くんのこと。
女の人に抱き着かれたとき、彼の瞳から一切の感情が消えたように思ったのは、どうしてだろう。
バラバラと窓を叩いていた雨が、サーと遠ざかったような音に変わる。
お母さんが気合いを入れて作ってくれたお弁当の中で、顔が崩れたクマがじっと私を見ていた。
遠くでお昼休み終了のチャイムが鳴るまで、私はじっと動けずにいた。